DAOの可能性と事件、これからを考える|DApps(ブロックチェーンを活用したアプリケーション)のことなら

TOP  コラム  DAOの可能性と事件、これからを考える

DAOの可能性と事件、これからを考える

2019.02.26

コラム

DAOの可能性と事件、これからを考える

イーサリアム界隈でよく聞く「DAO」
インターネット登場以来の革命をもたらす存在として、高い注目を集めるブロックチェーン技術ですが、その応用可能性を拓く鍵のひとつにはスマートコントラクトとの組み合わせがポイントと見る向きも強くあります。

ブロックチェーンにおけるスマートコントラクトでは、あらかじめ規定した契約内容をブロックチェーンに書き込み、その中にある一定の条件が満たされれば、該当取引をシステムにより作成から確認、履行まで自動実行する仕組みが機能します。

それぞれの技術概念が生み出す特性が最大限に活かされ、トラストレスでありながら、高い透明性と安全性、信頼性を確保し、不正改ざんのリスクをほぼ不可能なまでに低減して、契約不履行のリスクもなくす、正しい内容で確実に成立させられるこの仕組みは、あらゆる業種業態、生活のシーンに役立てられることでしょう。契約の自動化で生まれる、人的手間の削減、コストの低減、スピーディさも魅力です。

さて、この将来性ある仕組みについての議論で、しばしば「DAO」というワードが登場します。とくにスマートコントラクトを導入したブロックチェーンプラットフォームとなっている、イーサリアムの文脈では頻出ワードといえるでしょう。そこで今回はこの「DAO」とは何なのか、話題となっている理由や今後への展望も含め、解説していきます。

「DAO」とはそもそも何なのか?
「DAO」というのは、「Decentralized Autonomous Organization」の頭文字をとった略で、日本語表現では「自律分散型組織」などとされているものです。ブロックチェーンにおけるスマートコントラクトを判断の基幹システムとしており、特定の管理者や主体を一切もたない組織であることが最大の特徴です。

構成するメンバー1人1人は、みな平等な関係性にあり、そこに階層構造はありません。それぞれが自律的に存在し、組織運営の重要な決定や実行などは、全員の合意によりあらかじめ定義されたルールに従うものとなり、実質的にはそれをプログラミングしたコンピュータによる執行が全体を管理し、動かしていきます。

これまでのあらゆる組織や団体は、必ずそこにまとめ役となる主体、企業ならば経営者といったリーダー的存在があり、その下に一般労働者や参加者があるものとなっていました。意思決定はもちろん、通常、利益も上から順に取られていく仕組みで、そこには階層構造があり、いわば中央集権的なかたちで集団が維持されています。

DAOはここから階層構造を抜き取り、非中央集権化したもので、“人”による管理から、みなが合意する内容に基づいてプログラミングした“コンピュータ(プロトコル)”による管理へ移行し、自律的・分散的に動き続ける組織の実現を目指したものなのです。

基本的に、ビットコインやイーサリアムなど、仮想通貨のネットワークもDAOの事例といえ、特定の権限をもった管理主体なしにシステムとして動いています。

「Code is Law」について
従来的な組織や契約では、“人”による管理があり、信用を担保する“人”としての第三者などが必要とされてきました。それに対し、ブロックチェーンのスマートコントラクト、DAOによる組織は、この“人”による恣意性を排除してコンピュータに置き換えることにより、不特定多数の人が出入りする中でも、トラストレスに非中央集権的な組織を構築できるようにしています。

よってそこでは「Code is Law」、「コードこそが法」として唯一の支配権をもつものとなるという考え方が生まれます。悪意をもった参加者が存在してもよく、個々はどんな振る舞いをしてもよい、全ては書き込まれたコードによって適正に処理されるという世界になり、これを厳守してこそ、ブロックチェーンやスマートコントラクトの仕組みが永続的に、公平に機能するのだと主張する、一種のアナーキズムといえる強い理念を打ち出す人々も出てきました。

多くのメリットを有し、社会の新たな可能性を切り拓くDAOですが、こうした根底にある考えをどこまで徹底するのか、それによって生まれる新たな問題点とどう向き合うかなどについては、まだまだ今後の議論の余地がある点でしょう。

「The DAO」事件が残したもの
イーサリアム界隈で「DAO」が頻繁に話題となる背景には、「The DAO」事件の発生があります。「The DAO」は、DAOの仕組みを応用した投資ファンドプロジェクトで、通常の投資ファンドとは異なり、トークンを保有する参加者自身が行う投票で投資先が決定される点、投資成果として得られた利益は投資額に応じて自動再分配され、純粋な市場原理のみに基づき、介在者も手数料もなく、ファンドに参加できるという点をポイントにしていました。

その画期的な発想から大いに注目を集め、流行していたICOにより資金をイーサリアムで約150億円分調達することに成功するなど、これ以上ない順調な滑り出しをみせたのですが、実際に稼働を始めて約1カ月が経過した頃、プログラムにあった脆弱性がハッカーによって突かれ、50億円相当のコインを盗まれるという事態になってしまいました。

「The DAO」には、投票結果が納得のいかないものであったときなどに、資金を切り離して新たなDAOを作成できる「Split機能」が設けられており、これによってDAOへの送金を行った場合は27日間、そこからコインの移動は行えないという決まりもありました。

無用な分裂が繰り返されることで、全体が機能しなくなることを防ぐ目的のルールでしたが、結果としてこれにより、ハッカーの盗んだコイン移動にも、27日間の期間が必要になったのです。

ネットワークは、まさに「Code is Law」の例外を許さず、事件結果も結果として受け入れるか、それとも人のコミュニティとして手を結び、ハッカーによるトランザクションを承認せず、なかったことにして被害を回避するハードフォークを実施するか、究極の決断を迫られることになりました。

最終的に、ネットワークコミュニティが投票により選択したのは、後者のハードフォークで、ハッカーの攻撃によるコインの不正流出は無効化されて資金も戻りましたが、恣意的に承認活動を左右する決断として、本来の非中央集権性、公平性といったコンセプトから大きく離れるものでもあったため、議論を巻き起こすきっかけになったのです。

その後、やはりハードフォークの実施には反対で、「Code is Law」を徹底すべきと考える一部のマイナーらが、実施前のブロックチェーンを維持するようになり、そこから現在「イーサリアムクラシック」と呼ばれる仮想通貨が生まれています。

「The DAO」の事件は、イーサリアムやブロックチェーン技術そのものに問題があったものではなく、あくまでもその上に構築した仕組み上の問題が原因ですが、DAOとして応用していく上で、ハッキングをはじめ思わぬ重大な問題が発生した場合に、どう対処すべきなのか、大きな課題があることを明るみに出すものとなりました。

一般的な法規制の外にある中で、どのようにDAOを活用していくのか、大きなメリットと可能性を秘めたものであるだけに、社会全体で考えていく必要があるといえるでしょう。

▼DApps総研
https://dapps-info.com/

(画像は写真素材 足成より)